坂総合病院 医学生・研修医のひろば
対談 VOL4 指導医・院長 内藤 孝 × 研修医 島 由衣・花木 安羅太

内藤:お二人は坂総合病院で初期研修を受け、1年が経過したところですね。はじめに、当院を研修先に選んだ理由からお聞かせいただけますか。
島:出身地の福島で初期研修先を選ぶつもりでしたが、県外に出て一から学んでみようと見学に来ました。そのとき、研修医1年目の先生が、自分で考えて主体的に活き活きと働いているのが印象的でした。24時間365日、患者さんを診られる体制と、ERの救急医療が勉強になり、責任感を持てると思ったからです。
花木:研修医の先生がキラキラしていると思ったのは同じです。若い先生が多く、表情が豊かでのびのびと働いていて、周りのスタッフと軽やかにコミュニケーションしている医療現場という印象でした。
内藤:実は、私もこの病院で初期研修を受けているんです、30年ぐらい前に。一貫して変わらないのは、基礎となる幅広い知識を早い段階で身につけるジェネラルな医師養成が根本にあり、当時からスーパーローテート研修を取り入れていたことです。
花木:ローテート研修では、1年目にメジャーな循環器科、外科、消化器科を3カ月ずつまわりました。ほかの病院では2カ月単位が多い中、3カ月研修できるのはありがたいです。1カ月目に病棟になじみ、2カ月目で診療の流れを掴み、3カ月目に担当医として診療できる。1年目の研修期間で、診た患者さんは100人くらい。各科でバランスよく経験できています。
島:いま受け持っている入院患者さんは8人。たまに10人のこともあります。私も1年目に診た入院患者さんは、100人くらい。当直帯では100人以上を診ています。ローテート研修に加え、外来や訪問診療、救急などを経験し、保険の書類などの事務仕事もこなし、気づいたらこんなにできるようになっていたという感じです。
内藤:当直では救急患者の初期対応もできるようになりますからね。3年目研修後に大学病院に戻る人もいて、医局からはカンファレンスでのプレゼンテーションがしっかりしていて基本的なことはできていると評価いただいているので、一定水準以上には育っていただいていると思っています。
花木:指導医の先生方は研修医をよく見ていてくださって「こういうところ抱え込みやすいね」と、メンタル面の心配をしてくださいます。特に年の近い先生方とは食事に誘っていただいたり、年の近い上級医の先生方とは、一緒に食事に行ったり、悩みを聞いていただいたり、ありがたい存在です。
内藤:研修医にはメンターとして上級医のメンターが1対1でついていますし、事務の方もいます。困ったときは1人で抱えこまず、気兼ねなく相談してください。心身が健康な状態で研修を全うすることが一番ですから。
島:上級医の先生方もですが、看護師さんや検査技師さんなどに育てていただいているのを感じています。病院の仕組みや検査のことなど、身近で相談しやすい雰囲気だと思います。
内藤:私も研修医時代はそっと教えてもらっていました。他職種のスタッフとの一体感は、中規模病院の良さでしょう。

島 由衣
花木 安羅太
指導医・院長 内藤 孝

島:患者さんと接する前は、研修医が受け持つと嫌がる方がいるのではと心配でしたが、臨床研修の長い歴史のおかげか、患者さんも自然に受け入れ、病状などについて詳しく話してくださいます。
花木:科長も上級医も治療だけではなく、患者さんの経済的な状況なども考えていて、そこまで相談に乗るのかというほどその患者さん一人ひとりにあった対応をされています。
内藤:患者さんと医師、医師同士、医師とコメディカルの方々、人間関係を築くのは大切なことですからね。
島:科長に電話で相談できるくらい垣根がないのも、当院らしさかもしれません。最初は分からなかったカルテの書き方も、上級医の先生が注目したところを参考にしたり、素敵だと思う先生の書き方を参考にしたりして、自分なりの書き方が身についてきました。
花木:最初は見ているだけだった往診も救急対応も、いまは独り立ちしています。将来は小児科の専門医として地域の中で老若男女も含めて患者さんの近くで医療をしつつ、医療現場からの声を社会へ発信できる立場になれたらと思っています。
内藤:当院の医師養成の基本は、専門性を持つにしてもプライマリ・ケアを身につけることにあります。併設の「みちのく総合診療医学センター」は後期研修プログラムが中心ですが、研修医が学べる企画を準備していこうと思っています。
島:自分が選ばなければ学べない科のことも、初期研修で身につけたいと思っています。
内藤:研修プログラムに完成はなく、常に変わっていきます。研修医から要望を出し、改善していくのが当院が培ってきた姿勢です。指導医の過半数が当院で初期研修を受けており、プログラムを考える「研修委員会」もスタンスは同じ。初期研修の1年目の終わりと2年目の秋には、研修医のみなさんと院長、副院長がテーブルを囲む、ざっくばらんな懇談会を設けていますので、改善点などどんどん要望を聞かせてください。可能な限り充実した初期研修プログラムにしていきたいと思っています。

PROFILE内藤 孝 ないとう たかし
1985年東北大学卒業。2014年坂総合病院院長に就任。公益財団法人宮城厚生協会の副理事長を兼任。
専門分野/糖尿病、脂質異常症
専門医資格/糖尿病専門医・研修指導医、総合内科専門医、プライマリ・ケア認定医、日医産業医、日医健康スポーツ医、東北大学臨床教授
PROFILE島 由衣 しま ゆい
2016年福島県立医科大学卒業。福島県出身。患者さんから「診てもらって安心する」と言われる中、ひと言ひと言に責任を感じる日々。
PROFILE花木 安羅太 はなき あらた
2016年東北大学卒業。仙台市出身。小児だけでなく親、祖父母まで、家族も診られる小児科医を目指し、2年目研修では6科をまわる予定。