坂総合病院 医学生・研修医のひろば
対談 VOL5 指導医・院長 内藤 孝 × 研修医 吉田一麦・早川晃司
指導医・院長 内藤 孝

内藤:初期研修を始めて1年が経過したところですね。はじめに、吉田先生と早川先生が、当院を初期研修先に選んだ理由を教えてください。
吉田:私は学生時代に地域医療サークルに参加していたのですが、その時に知り合った尊敬する沖縄出身の先輩が「全国の病院をいろいろ見て、ここだと思った」と、この病院を選ばれたことがきっかけです。
早川:僕は力をつけるには教育システムが整い、やる気のある先生が揃うところが良いと思いました。循環器内科を目指しているので循環器領域に強い病院をいろいろ見学しここに決めました。若い先生がカテーテル検査に主体的に取り組んでいるのが印象的でした。また研修医の数も10人とちょうど良いと思いました。
内藤:早い段階から実践し、経験を重ねていけますからね。実は30年ほど前、私もここで初期研修をしました。一貫して変わらないのは、幅広い知識を早い段階で身に着けた「ジェネラルな医師」を養成するために、当時からスーパーローテート研修を取り入れていたことです。これまでの研修はどうでしたか。
吉田:そんなに以前から。私は1年目のローテート研修では外科、呼吸器科、循環器科を3カ月ずつまわったところです。全国的には2カ月研修が多い中、私には3カ月研修が向いていると感じました。1か月目に病棟に馴染み、2カ月目に診療の流れを掴み、3カ月目に主体的に診療を行う。経験症例は3カ月あたり30-40症例ほどでした。
早川:僕も同じくらいの経験症例数です。現在受け持っているのは8人。慣れてはきましたが、情報整理、カルテ業務、勉強などが重なって、いっぱいになってしまうときもあります。
内藤:私たちの時代よりも、ずっとよく勉強されているように思いますよ。
吉田:まだまだわからないことも沢山あって、つい上級医の先生を頼ってしまいますが、なんとか対応しているうちに自信というか度胸がついてきました。他職種の方からは「指示がまだですよ」とか「薬の処方お願いします」とかフォローしていただいています。
内藤:私も研修医のころはそっと教えてもらっていました。看護師をはじめ事務スタッフも、さらには患者さんも研修医を受け止めてくれる環境がありますね。
早川:上級医の先生もただ答えを教えるだけでなく、なぜその症状がでるのか、どんな治療が向いているのか、まずは自分で考えられるように指導してくださるので思考過程から鍛えることができます。
内藤:もう45年以上もローテート研修を行ってきて培われた経験がありますし、指導医も過半数が当院での研修をうけていますから、要所をおさえているのでしょう。また、研修医からの要望をうけて「研修委員会」が内容を見直し、常にプログラムをアップデートしていくのが当院の研修が満足される理由の1つだと思います。

吉田:中規模病院ならではの風通しの良さも感じています、産婦人科で担当した患者さんですが、複合病態であったため、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、外科、放射線科、泌尿器科といった複数の診療科の先生と直接相談し診療を行いました。まわりの先生方をみても普段から良い雰囲気で相談し合い、診療科を超えた診療を行っていると感じます。
内藤:各診療科の連携、研修医と指導医の関係の良さは自慢できるところです。これまでの研修で印象に残っていることを教えてください。
吉田:印象に残っているのは治療や今後の療養先などに苦慮した患者さんのことです。「命が短くなってもいいから家に帰りたい」と望まれて、ご家族もそれに同意されました。要望に応えるため、退院支援の看護師、リハビリスタッフ、病棟看護師、ケアマネージャーなど多職種と協力し在宅診療に切り替えたところ、容態が安定しました。病院での処置だけが重要ではないのだと感じました。QOLを重視した全人的な医療が行えた気がします。
早川:大学のころには理論が中心でした。研修を始めてみて、急変の患者さんに的確な判断で、とても早く効率的かつ丁寧な処置をされる科長医師をみて感銘を受けました。3年目の先輩も実践だけでなく、「この計算式がね・・」と理論的な知識や統計的な知識をもって診療に取り組んでいて、力量プラス論理力に圧倒されています。
吉田:先輩は忙しい業務の中でも、仕事が早く、話しかけやすく、穏やかな雰囲気。そんな姿勢にも教えられています。
内藤:そんな経験もあるからでしょう。3年目研修後に大学病院に戻った人も、医局から救急対応やカンファレンスでのプレゼンテーションがしっかりしていると評価されているので、一定水準以上に育っていただいていると感じています。
早川:僕は1年経って、患者さんの病状や緊急度を端的にまとめ、上級医と相談をかわすことができるようになったと思っています。
内藤:充実した研修の成果ですね。研修医にはメンターとして指導医が1対1でつき、当直のチューターとして若手の上級医も1対1でついています。研修担当事務の方もいます。困ったときは一人で抱え込まず気兼ねなく相談してください。心身が健康な状態で研修を全うすることが一番ですから。初期研修の1年目の終わりと2年目の秋には研修医のみなさんと院長、副院長がテーブルを囲んで意見を交わすざっくばらんな懇親会を設けています。充実した初期研修プログラムにしていきたいと思いますので、改善点など、みなさんの要望をどんどん聞かせてください。また各診療科で学び成長した姿を楽しみにしています。

吉田一麦
早川晃司
PROFILE内藤 孝 ないとう たかし
1985年東北大学卒業。2014年坂総合病院院長に就任。公益財団法人宮城厚生協会の副理事長を兼任。
専門分野/糖尿病、脂質異常症
専門医資格/糖尿病専門医・研修指導医、総合内科専門医、プライマリ・ケア認定医、日医産業医、日医健康スポーツ医、東北大学臨床教授
PROFILE吉田一麦 よしだ いづみ
2017年秋田大学卒業。岩手県出身。ローテート研修3カ月目の最終日、患者さんから「寂しくなるね」と言われ、お互い涙目に。患者さんと研修医の距離の近さも実感。
PROFILE早川晃司 はやかわ こうじ
2017年新潟大学卒業。宮城県出身。内科全般の知識をもつ、循環器内科の専門医が目標。見本となる先生方から、少しでも吸収していきたいと強く願う日々。