坂総合病院 医学生・研修医のひろば
対談 VOL6 指導医・院長 内藤 孝 × 研修医 桑嶋 理沙・渡邉 茂弘

内藤:初期研修の1年が経過したところですね。桑嶋先生と渡邉先生が当院を研修先に選んだ理由から教えていただけますか。
桑嶋:病院見学に来たときに、研修医の先生が主治医としてイキイキと働いているのが印象的でした。他の病院が診療科を1~2カ月でまわるのに対し、3カ月間診られるのも選んだ理由のひとつです。初期研修の2年間で内科医の土台をつくりたいと思って選びました。
渡邉:僕は現場力をつけて、なるべく早くチーム医療で活躍できる人材になりたいと思い当院を選びました。初めて見学に来たのは、大学3年生のときです。研修医の先生の意見を踏まえて治療方針を決めていたのが印象的で、病院の中でリーダーシップを発揮し一人前として活躍していると感じました。
内藤:当院では早い段階から、医療の現場で経験を重ねていけますからね。実は30年ほど前、私もここで初期研修をしたんですよ。
渡邉:そうなんですね。かなり前から研修プログラムがつくられていたんですね。
内藤:国の臨床研修制度が始まる前から、独自にローテート研修を行っていたので40年以上の歴史があります。当時から、幅広い知識を早い段階で身につけたジェネラルな医師を養成しようという考えは一貫しています。
桑嶋:この1年間を振り返ってみると、私の場合は循環器科、外科、消化器科の3科をまわり、各科30-40人の入院患者さんを受け持ち、合わせて100症例くらいは経験できています。その他に当直も1回10人くらい診ています。症例は幅広いです。
渡邉:自分も入院患者さんは100症例くらいです。初期研修医に任されるウエイトが大きいのが当院の研修の特徴だと思います。
桑嶋:おかげで度胸がついてきました。当直のとき、もちろん通し当直医には相談できますが、基本は1人で診察しています。ベテランの看護師とも相談しながら外来をこなしています。また、受け持ち患者の急な変化にも対応する中で、気付けば外来、救急対応まで1人でできるようになっていました。
内藤:そう言ってもらえるとうれしいですね。いつのまにかできるようになったのではなく、段階的に経験できるようなプログラムを組んでいます。
渡邉:そのようにプログラムが組まれていると感じています。初期対応や困った症例を抱え込んでいたとき、指導医や科の先生が陰で情報を把握して、僕の力量を見ながら、適切なタイミングで「この検査が必要だね」と指導をいただけていたように思います。経験を重ねる中で、全体を俯瞰して、次にどうすべきか考えながら動くことできるようになってきたと思います。
内藤:指導医の先生方の過半数が、当院で研修を受けていますから、要所をおさえているのでしょう。研修後に大学病院に戻る人もいて、医局からはカンファレンスでのプレゼンテーションがしっかりしていて基本的なことはできていると評価いただいているので、一定水準以上には育っていただいていると思っています。

桑嶋 理沙
渡邉 茂弘
指導医・院長 内藤 孝

桑嶋:当直の後、ひとつ上の先輩が一緒にカルテを見て「もっとこうしたらよかったんじゃない?」とフィードバックをして頂き勉強になります。また3~4年目の先生との距離感も近く、ちょっとしたことも聞きやすい雰囲気があります。
内藤:研修医にはメンターとして指導医が1対1でつき、当直の振り返りで5年目までの先輩医師が1対1でつき、さらには研修担当事務の方もいますから、困ったときは1人で抱え込まず気兼ねなく相談してくださいね。
渡邉:自分はSOSを出すのが苦手なのですが、同期が研修担当事務の人に「彼がそろそろ疲れているみたい」と伝えてくれて、研修担当事務の方が「大丈夫?」と相談にのってくれたこともあります。見てくれているのだと安心もしますし、話をすることが今の自分の状況を計るモノサシにもなって、自分を第3者的にを見ることができるようになりました。
桑嶋:研修医が体調やメンタルを崩したとき、すぐに気づいて対応してくださるのは、この病院の良いところだと思います。自分からSOSを言ったり、同期から研修担当事務の方に伝えたり。「SOS制度」は、いい制度だと思います。同期が10人いるのも心強いです。
渡邉:10人は丁度よい人数だと感じています。個性豊かな同期に恵まれ、仲もよく自分がつらい時には支えて貰っています。院内のバレー部に所属しているので、仕事の後、近くの小学校の体育館で1時間ほど練習で汗を流して、リフレッシュしています。
内藤:みなさんが健康な状態で研修を全うすることが一番ですからね。院内外の連携も大切にしたいところです。初期研修1年目の終わりには、研修医のみなさんと院長、副院長がテーブルを囲んで意見を交わすざっくばらんな懇談会も設けていますし、地域連携の会として6月と12月には、地域の開業医や病院の先生方を招いての懇談会も行っています。
桑嶋:6月の地域連携の会に参加しました。入院患者さんの紹介状を書く中で名前だけ知っている開業医の先生に実際にお会いすると感動します。紹介状にどういうことを記載すればよいのか開業医の先生方の目線からお話をうかがえたのもよい機会でした。
内藤:要望や改善点があれば、どんどん聞かせてくださいね。声をもとに「研修委員会」が内容を見直し、常にプログラムをアップデートしていきますから。お2人のさらに成長した姿を楽しみにしています。

PROFILE内藤 孝 ないとう たかし
1985年東北大学卒業。2014年坂総合病院院長に就任。公益財団法人宮城厚生協会の副理事長を兼任。
専門分野/糖尿病、脂質異常症
専門医資格/糖尿病専門医・研修指導医、総合内科専門医、プライマリ・ケア認定医、日医産業医、日医健康スポーツ医、東北大学臨床教授
PROFILE桑嶋 理沙 くわしま りさ
2018年福島県立医科大学卒業。仙台市出身。最近うれしかったのは、繰り返し接することで打ち解けた入院患者さんの食事量が増え「先生に出会えてよかった」と言ってもらえたこと。
PROFILE渡邉 茂弘 わたなべ しげひろ
2018年秋田大学卒業。静岡県出身。仕事にのめり込みがちな日々でも、同期と笑い、バレー部で汗を流して気分転換。コメディカルとも垣根なく、各職種から教えてもらい診療の参考に。