坂総合病院 医学生・研修医のひろば
対談 VOL7 指導医・院長 内藤 孝 × 研修医 熊谷 優大・近野 かおり

内藤:初期研修医のみなさんが、医局で指導医の先生方と意見交換している姿から、熱心に研修している様子が伺えます。1年が経過したところですが、慣れてきましたか。
近野:自分が考えていた段階にはまだほど遠いのですが、カルテのまとめ方から重症対応まで、指導医の先生に1対1で初歩から教えていただいて、楽しく研修できています。
熊谷:担当医としてチーム医療に関わらせていただいています。メジャー診療科の研修では、1カ月目はあっという間に過ぎ、2カ月目には指導医から背中を押され、3カ月目には主体的に動けるようになり、学んだことを実践するところまで到達できています。大学1年の夏に実習に来たときに感じたのは、初期研修後もそのまま残っている先生方が多いので居心地がよいのだろうということ。その印象は今も変わりません。
近野:まず自身で治療計画を立てさせてもらえるのが実践的です。そして、指導医の先生からフィードバックしていただけるので安心です。
内藤:指導医の先生方の過半数が、当院で研修を受けているので、要所を押さえているのでしょう。国の臨床研修制度が始まる前から、独自にローテート研修を行っていたので50年近い歴史があります。実は、私も30年ほど前ここで初期研修を受けているんですよ。当時から、早い段階で幅広い知識を身につけたジェネラルな医師を養成しようという考えは一貫しています。
 初期研修を受けた方の中には、研修後に大学病院に戻る人もいます。大学の医局からは基礎がしっかりしており、カンファレンスでのプレゼンテーションも能力も高いと評価いただいています。大学病院から初期研修医の受け入れを打診されたこともあり、充実したプログラム内容と自負しています。
熊谷:この1年では、循環器科、呼吸器科、外科をそれぞれ3カ月ごとまわり、各科30~40人の入院患者さんを受け持ち、合わせ100症例くらい診ています。救急搬入から退院まで一連の流れを経験出来ました。また、症例の数や種類の多さも特徴だと感じています。
近野:私も100症例くらい経験しています。呼吸器科、外科、循環器科とまわり、今の循環器科では看護師さんと協力しながら患者教育を行うこともできました。食事や体調の管理に関心がなかった心不全の入院患者さんが、会うたびに飲水制限や食事指導を積極的に実践してくれるようになったときは、患者さんの為に力になれた喜びがありました。

熊谷 優大
近野 かおり
指導医・院長 内藤 孝

熊谷:特にうれしかったのは、両足趾壊死の患者さんのデブリードマン(壊死組織を除去して清浄化する治療)を根気強く続けることで、予想よりも早く治療が進み、皮膚排泄ケアの認定看護師さんに褒められたことです。研修医だからこそ、じっくりと時間をかけて対処できることがあり、そこを認めてもらえたのだと感じています。
内藤:看護師をはじめ事務スタッフ、さらには患者さんまでも研修医を受けとめてくれる環境が整っていますからね。
熊谷:起立性低血圧の精査でパーキンソン病の診断につなげることができたのも、自身の中で良い経験になりました。
内藤:1年目でよくそこまで気がつけましたね。患者さんを取り巻く環境を含めて、全体をとらえるプライマリケアの研修をベースにしていることが、役立っているのでしょう。
熊谷:地域医療で、医学的な視点にとどまらず生活環境や背景など、患者さんが抱える不安にまで対処したいという思いも、当院で研修を受けたいと思った動機の一つでした。
内藤:地域や社会的な側面まで意識して研修を行っているのは、すばらしいですね。
近野:先輩や指導医の先生、看護師さん、職員の方との垣根が低いのはもちろんですが、「地域連携の会」に参加し、地域の診療所や病院の先生方との懇談会を通して、地域からみた医療のお話をうかがうことが出来ました。「みやぎ東部健康福祉友の会 健康まつり」では、こんなに大勢の地域の方々が参加されており、地域における坂総合病院の親しみやすさを感じました。
内藤:地域のみなさんの声を直接聞く機会も大切にしたいと思っています。それは院内も同じです。研修医には、指導医が1対1でメンターを担当し、当直の振り返りでは5年目までの先輩医師がチューターを担当し、相談しやすい環境作りをしています。さらには研修担当事務の方も複数いますから、困ったときは1人で抱え込まず気兼ねなく相談してください。研修医のみなさんと院長、副院長が意見を交わすざっくばらんな懇談会も設けています。要望や改善点があれば、どんどん聞かせてください。その声をもとに「研修委員会」が内容を見直し、常にプログラムをアップデートしていきますから。今後の、おふたりのさらに成長した姿を楽しみにしています。

PROFILE内藤 孝 ないとう たかし
1985年東北大学卒業。2014年坂総合病院院長に就任。公益財団法人宮城厚生協会の副理事長を兼任。地域医療の連携や働き方改革などにも力をいれている。
専門分野/糖尿病、脂質異常症
専門医資格/糖尿病専門医・研修指導医、総合内科専門医、プライマリ・ケア認定医、日医産業医、日医健康スポーツ医、東北大学臨床教授
PROFILE熊谷 優大 くまがい ゆうだい
2019年東北大学卒業。宮城県出身。大学1年時に坂総合病院で実習。訪問診療で生活環境を見て診察する医師の姿を見て、地域医療に携わりたいと思い、宮城民医連の奨学生となる。
PROFILE近野 かおり こんの かおり
2019年愛知医科大学卒業。山形県出身。大学2年時に実習した時、すれ違う人がみなあいさつを交わす雰囲気の良さが印象的だった。休暇を使って台湾旅行へ出かけ、気分も一新。