齋藤 剛熙
初期研修で様々な科を研修し『将来どの科に進み、どんな医師になりたいか』考える中で、“もともと志望していたけど、働いてみたら違った” “全然興味なかったけど、結構面白い” など実際の経験に基づいた考えの変化や、“いろんな科を回ってみたけど、いまひとつ自分のやりたいことが見つからない” “各科の業務に慣れるのに必死で将来の事なんて考える暇がなかった” といった将来への不安なども出てくるのではないでしょうか。
私自身、“患者さんの一生に関われるような医師になりたい”と考え、生まれた時から亡くなる時までを診ることができる産婦人科を学生の頃から志していました。しかし、初期研修医として日々の診療を行う中で『患者さんの生活に寄り添い、ともに生きる』という総合診療科(特に家庭医やプライマリケア医)の考え方に共感し、興味が湧いてきました。なりたい医師像はなんとなく見えているけれど、日々の業務が忙しく考える時間もなく、どうしようと迷っている時に知った『Transitional Year研修』。医師3年目の1年間は自分と向き合う期間にしようと考え、この研修を行うことに決めました。
Transitional year研修では松島海岸診療所(無床診療所)で9ヶ月間、外来と訪問診療を行いました。慢性疾患管理から悪性腫瘍の緩和ケアまで幅広い疾患を診つつ、総合診療的な考え方を学び、実践することができました。医学的な知識はもちろん、患者さんや家族、地域の方々とのコミュニケーション、コメディカルを含むチーム医療の中での立ち振る舞いやリーダーシップのとり方など、医師として生きていくうえで非常に重要なことを学ぶ事ができました。そして何より、専門研修プログラムや達成目標といった縛りがない中での研修のため、思う存分自分と向き合い、将来について考える時間を作ることができました。
最終的には産婦人科に進むことを選び、産婦人科専攻医となりましたが、このTransitional year研修で得た経験は多くの場面で活きており、これからの医師人生で必ず役に立つと強く感じています。もし将来の進路に悩むことがあれば『1年間、自分と向き合うという選択肢もある』ということを思い出してみてください。